俺たちはどこで道を間違えたんだろう
 
 
 
 
 
 
 
ぼくの兄ちゃん3 
 
 
 
 
 
 
 
 
ナルトが働き始めてから4年が経った。
 
社会人になったのだから、一人暮らしを始めて自立したいという気持ちがあったが、父と弟が
やんわりとその事を避けるのでなかなか言い出せずにいた。
また、ナルト自身も実家が居心地がいいので「このままでもいいか」と思う気持ちが強かったのも事実だ。
 
 
 
 
ある日。
ナルトは仕事帰りに友人と酒を飲み、千鳥足の状態で自宅へ帰った。
 
「たらいま〜」
 
呂律が回らない声で家の中に声を掛ける。
サスケが呆れた顔で玄関までやって来た。
 
「このドベ。何酔っ払ってんだ」
「いや〜久々に高校のツレに会っちゃってさ。つい話が弾んで飲み過ぎちゃったってば」
「ったく」
 
「あり?父さんは?」
「今夜は鳥取まで行くって言ってたからな。帰りは明日の午前中だ」
「そっか〜。じゃあ今夜は兄弟水入らずだな」
 
ニシシ、とナルトが笑うとサスケは眉間に皺を寄せた。
 
「このウスラトンカチ」
 
そう言いながらもサスケはナルトの靴を脱がすのを手伝ってやり、腕を肩に回すと部屋まで運んだ。
壊れ物を扱うようにナルトは優しくベッドに下ろされる。
 
 
「水飲むか?」
「・・・欲しい」
「ちょっと待ってろ」
 
 
ナルトは目を閉じたまま夢うつつにサスケに返答する。
まさに眠る寸前だ。
 
 
「ほら」
 
サスケはキッチンで水を汲むとそのコップをナルトの口元に運ぶ。
ナルトはそれを器用に寝転びながらごくごくと喉に流し込む。
 
「はぁ」
 
熱さが少し和らぎ、喉が潤う。
サスケに礼を言おうと顔を上げると、サスケの顔が予想以上に近いことに驚いた。
 
「サス」
 
声にならなかった。
口を塞がれたから。
 
―――――サスケの口によって。
 
コップが床に当たる音がした。
 
 
 
何が起こったのか。
 
 
 
「んっ」
 
呆然としていると、サスケの舌が口内に入ってきた。
抗おうにも酒が入っているせいで体が思うように動かない。
サスケの体がナルトに乗っ掛かって押し倒されたような体勢になっている。
 
「はっ」
 
歯列をなぞり、舌を絡ませ、ぴちゃぴちゃといやらしい音が室内に響き渡る。
 
「うあっ」
 
ようやく口を解放されると今度は耳に舌を這わせられる。
ぞくぞくと悪寒に近いものが全身を走る。
 
「や、止めろっ。止めろサスケ!」
 
サスケの体を退かそうにもびくともしない。
 
6つ離れているとはいえ、サスケも今年で高校1年生。
身長差はどんどん縮まり、今ではほとんど背丈は変わらない。
 
「!」
 
サスケの手がナルトのズボンのベルトに掛かり、器用に外していく。
そして、下着の中に手を入れた。
ビクッとナルトの体が波打つ。
 
ナルトのモノを掴まれて上下に扱かれる。
ナルトの意志とは無関係にそれは徐々に自己主張を始めた。
 
「あっ、んん」
 
自分の声とは思えないくらい高い声が出て、ナルトは思わず口を手で塞ぐ。
サスケはナルトの上着を捲し上げると露になった胸元に舌を這わせた。
 
「ふっ、はぁ」
 
 
意識が朦朧としている。
 
何が起こっているのだろうか。
 
頭は覚醒しないまま、体の神経だけが研ぎ澄まされたように僅かな刺激にも反応する。
 
 
目の前の男が誰だか分からない。
ナルトの知っている弟ではない。
 
 
こいつは、誰だ。
 
 
しかしただ、快感だけが全身を支配する。
サスケが胸の頂きを軽く噛むと鋭い快感が走った。
 
 
「あ、――――っ!」
 
その瞬間、ビクビクと体を波打ちながらナルトは達した。
全身が弓なりに仰け反り、そして脱力する。
揺らぐ視界の中、サスケが手についたナルトの精液を舐めているのを見た。
 
 
「おまっ!」
 
ナルトはかぁっと羞恥で顔が赤くなる。
ナルトのその表情を見て、サスケは意地悪そうに笑った。
 
「たまってたのか?」
「っふざけんな!」
 
ナルトの抵抗はいとも簡単に遮られて、再び口付けられる。
達した後の体に力が入らず、なすがままだ。
 
「うあっ!」
 
ナルトがビクリと体を痙攣させる。
自身の尻にサスケの手が這っていて、ある一点で止まる。
 
「止めろっ」
 
そこは女性のような器官ではない。
しかしサスケはそこに指を1本挿入した。
 
「ひっ」
 
ピリ、と何かが裂けるような痛みを感じた。
 
「サスケ、抜いてっ・・・」
 
気持ち悪い。胃の中の物が逆流するような感覚に襲われる。
 
「んっ」
 
サスケはもう片方の手で再びナルトのモノをゆるゆると扱いた。
先程達したばかりだというのに、そこは徐々に立ち上がる。
やがて指が抜かれ、ホッと息をついたのも束の間に、今度は2本挿入された。
 
「ああっ」
 
再び痛みが走る。
だが前をきゅっと掴まれると違う感覚が全身を支配する。
 
「んっ」
 
指を上下に動かされる感覚がはっきりと分かる。
段々と痛みは和らいでいく。
代わりに、得体の知れない何かが体を襲う。
 
 
「あ、ふぁ」
「っ」
 
縋るようにサスケに目をやると、眉間に皺を寄せてこちらを見ている。
サスケが不機嫌な時に見せる顔に似ているが、今は何か切羽詰った感じだ。
 
「サスケ?んっ」
 
ズル、と指が抜かれた。
ナルトはようやく違和感が抜けたのでふっと力を抜くが、すぐにまた体を強張らせた。
両足を抱え上げられてサスケの肩に乗せられる。
 
「え?」
 
状況についていけない。
 
「力、抜け」
 
サスケが余裕のない声で短くそう言う。
ナルトは後方に何か熱いモノを押し当てられたのに気付いた。
それがサスケのモノだと分かった瞬間。
 
 
「あっ・・・―――――!!」
 
声にならない痛みが全身に走った。
全身を裂くような痛みだ。痛みで目の前がチカチカする。
 
「うっ」
 
サスケも辛そうに眉を顰める。
 
「うああっ!」
 
ナルトは生理的に涙を流した。
 
痛いのか熱いのか寒いのか辛いのか、もうよく分からない。
 
ただ、一ヶ所からずくずくと侵食されていくような感覚を感じた。
 
サスケがズズッ、と少しずつ腰を押し進める。
 
「ナルト、もうちょっと力抜け」
「む、りっ」
 
サスケの声ですら響いて痛い。
サスケはすっかり萎えてしまったナルトのモノを掴んだ。
そしてゆっくりと上下させる。
 
「あ、はっ」
痛みが全身を支配しているのに、そこだけは快感に忠実だった。
ナルトの力が抜けると、サスケはナルトを気遣うようにゆっくりと腰を動かし始めた。
 
「んあ。ふっ、ううん」
 
痛みはさほど感じなかった。
いや、既に感覚がないのかもしれない。
しかし、ナルトのモノは素直に快感を感じていた。
先端から透明な雫がツ、と流れる。
滑りが良くなってナルトのモノを扱くサスケの手は早くなっていく。
 
「あっ、ああっ」
 
サスケの動きが激しさを増す。
後方からはぐちゅぐちゅといやらしい音が聞こえてくる。
その音は耳に入ってくるが、頭の中で上手く理解出来なかった。
思考回路が上手く働かない。
ただ、与えられる快感だけに忠実に感じた。
やがてナルトの体がびくびくと激しく波打つようになった。
限界がそこまで来ている。
 
「んっ」
サスケに乱暴に口付けられる。
噛み付くようなキス。それはサスケにも余裕がないことを示していた。
 
「ナルトっ」
「―――――っ!」
 
吐息混じりに耳元で名を呼ばれて、ナルトは果てた。
それを追うようにサスケも歯を食いしばる。
ナルトは体内に熱いものが注ぎ込まれるのを感じながら、意識を手放した。
 
 
起きたら、朝方だった。
自分の体を見ると寝巻きをきちんと着て、布団に横になっている。
 
・・・夢?
 
サスケの姿は見えない。
家の中に誰かいる気配も感じない。
体を起こすと下半身に鋭い痛みを感じた。
 
「いてっ」
 
その痛みが、昨夜のことを思い出させる。
 
サスケに口付けられ。
サスケに扱かれ。
そして。
 
「・・・ははっ」
 
何故だか、笑いがこみ上げてきた。
ナルトは上半身だけ起こした状態で、膝を立ててそこに顔を埋めた。
涙が流れた。
しかし、それすらも他人事のような気がした。
 
 
サスケに、弟に犯された――――。
 
 
その事実だけがナルトの体に重く圧し掛かった。
 
『ナルト』
 
熱を帯びた声で自分の名を呼ぶサスケの声だけが耳に残っている。
 
 
そんな風に呼ばないでくれ
 
 
ナルトは姿が見えない弟に懇願した。
 
 
 
 
 
それから、ナルトはサスケを避けるようになった。
それはサスケも同様だった。
その出来事があって1ヵ月後、ナルトは実家を出て一人暮らしを始めた。
 
 
「じゃあな」
 
家を出る時、サスケに突き放すように言った。
サスケは何も言わなかった。
 
2年前の、初夏の出来事だった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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